何も知らない、何も分からない
![](https://1con.jp/page/wp-content/uploads/2023/10/cropped-profile_d127b41b7ffd384be5bdcb5116bb2ba2-1.jpg)
私は「何も知らない、何も分からない」という言葉を大事にしています。この言葉は知を売りにするコンサルタントの自己紹介としては不思議なものと感じる人も多いようです。一体何を売っているのかと聞いてくる人もいます。そこで、この言葉が意味するところについて詳しく書いていきたいと思います。
1.話をよく聞くこと、知らないことを知らないと言うこと
コンサルタントの仕事は、クライアントの状況や課題を的確に理解し、最適な解決策を導き出すことです。そのためには、クライアントの話をゼロから丁寧に聞く姿勢が不可欠です。「何も知らない、何も分からない」という言葉は、先入観を捨て、真摯にクライアントの話を受け止める姿勢を示すものです。
コンサルタントは、業界のことや企業文化についてクライアント以上に詳しいわけではありません。コンサルタントは遅れた経営体に知識を授ける指導者ではなく、対等な立場で対話を深める存在です。「何も知らない、何も分からない」という姿勢で聴き、学び、考える姿勢がなければ、あるべき姿に向けたロードマップを描くことは出来ないでしょう。
コンサルタントは知識があるものだと思われる傾向にあるため、つい「何でも知っている」ように見せたくなるものですが、それは知ったかぶりというものです。どんな努力をしようとも、お客様の事はお客様の方がよく知っています。知ったかぶりはクライアントを危機に誘うものです。「知らないことは素直に認め、必要なら調べる」姿勢を示すことが、長期的な信頼につながるものと考えています。
また、「知らない」と言える勇気は、コンサルタントにとって非常に重要です。これは、クライアントとの信頼関係を築く上で欠かせない要素であり、逆に「知っているふり」をすると、それが後々の大きな問題につながることがあります。真摯に「知らない」と認めることで、クライアントも安心し、共に課題解決に向き合う姿勢が生まれます。
2.ゼロベースで考えること
クライアントというのはその会社のプロフェッショナルです。そのプロフェッショナルが困って相談に来ているのですから、これまでのその会社の考え方では解決が困難な問題に直面しているということです。そこではよく分かっている人たちの考え方ではなく、「何も知らない、何も分からない」人による固定観念にとらわれないものの見方が必要です。
多くのコンサルタントは、過去の経験や成功事例を基にアドバイスをします。しかし、ビジネス環境は日々変化しており、過去の成功が必ずしも現在の解決策になるとは限りません。「何も知らない、何も分からない」と言うことで、クライアントごとに最適なアプローチを考える柔軟性が重要になります。固定観念に頼り切り、共に考え、共に悩み、共に泣き、共に学ぶマインドがなければ、困難に立ち向かっていくことは出来ないでしょう。
また、ゼロベースで考えることは、従来の枠にとらわれない革新的なアイデアを生み出すためにも欠かせません。成功事例に固執せず、新たな解決策を模索することが、クライアントにとって最も価値のある支援になります。過去のやり方に頼らず、その企業や市場に最も適した方法を導き出すことこそが、コンサルタントの真の役割と言えるでしょう。
3.相談しやすさ
コンサルタントの中には、自分を権威者に見せることで受注を獲得しようとする人も多くいます。しかし、この態度はクライアントにとって好ましいものではありません。クライアントが心理的安全性を失い、本音コンサルタントの中には、自分を権威者に見せることで受注を獲得しようとする人も多くいます。しかし、この態度はクライアントにとって好ましいものではありません。クライアントが心理的安全性を失い、本音を話しにくくなり、懸念点を話せないままこちらの言うことに盲従してしまう可能性があるからです。「何も知らない、何も分からない」という言い方はクライアントに親しみやすさと安心感を与え、心を許して話すことが出来るようにするための努力です。
クライアントが本音を話せる環境が整っていなければ、正しい解決策を導き出すことは困難になります。コンサルタントとして、クライアントが「何でも話せる」と感じる空気を作ることが重要です。そのためには、自分を万能な存在と見せるのではなく、一緒に考えるパートナーとしての立場を示すことが大切です。
また、「相談しやすいコンサルタント」であることは、単なる戦略ではなく、クライアントとの長期的な関係を築く上で不可欠です。信頼関係があればこそ、深い問題に踏み込むことができ、より効果的な支援が可能になります。
4.おわりに
私に最初にこの考え方を教えてくれたのは、新卒時の教育担当です。最初の教えは「知らないことは知らないと言え」でした。自分を知的に見せようとして知らないことに対して知ったような顔をしていると、困ったことになるという話でした。その後、多くの人と出会い、仕事をし、失敗を重ね、この考え方に辿り着きました。私はコンサルタントという仕事を「何も知らない、何も分からない」という職業と捉えて仕事をしております。