中小企業診断士として独立するならどこがいいの?~中小企業診断士市場魅力度調査~
よく分からない中小企業診断士のマーケット
今回は私たち中小企業診断士自らの市場について分析してみたいと思います。士業としての存在感が上がりつつある中小企業診断士ですが、そのマーケットはよく分かっていないというのが実情です。特にこれから独立を目指すという中小企業診断士にとって、市場選択というのは非常に重要ですが、実際にはほとんどの中小企業診断士が今、自分が住んでいる地域で独立している、というのが実態です。
そこで、今回は、中小企業診断士として独立するならばどの地域が魅力的なのか?という観点から市場分析をしていきたいと思います。
診断士1人あたりの中小企業の数が多ければ市場は魅力的なはず
まずは中小企業数が多く、中小企業診断士の数が少なければそれだけ市場は魅力的と考えるのが自然です。ですが、中小企業数と中小企業診断士の数はどうやって調べればいいのでしょう?中小企業の数は公的な統計がありました。中小企業庁が2021年6月時点での中小企業数を都道府県別にまとめており、その数は全国で3,364,891社でした。
一方で中小企業診断士は都道府県別の登録者数のデータが公開されていません。都道府県ごとにある協会の会員数も公開されていない所が多く、もし分かったとしても中小企業診断士は複数の協会に入会することが可能なのでMECEとは言えません。どうしたものでしょうか。
というわけで、決して完璧ではないものの、認定支援機関の検索サイトを使い、中小企業診断士として認定支援機関登録をしている中小企業診断士の数を都道府県別に集計しました。決して正確な中小企業診断士数ではありませんが、信頼できるおおよその目安になるはずです。
そうして、中小企業数を中小企業診断士数で割ったものを都道府県別に表示したものがこちらです。色が濃いところほど中小企業診断士1人あたりの中小企業数が少ない地域、すなわち過密で競争の激しい地域となります。逆に色の薄い地域ほど中小企業診断士が中小企業数に比べて少なく、市場として魅力的です。
でも、地方ほど中小企業診断士ニーズは少ないかもしれない
こうして見ると、都市部ほど中小企業診断士が過密で、地方ほど市場が魅力的のように見えます。しかしちょっと考えたいものがあります。ひょっとすると地方は私たち中小企業診断士への期待が少なく知名度も低く、コンサルニーズが顕在化していないのかもしれません。中小企業診断士へのニーズが顕在化していない地域には中小企業診断士もそこで開業しようとはしないため、結果として市場が空いているように見えるだけかもしれません。実際の市場ニーズも見てみたいところですね。
実際の市場ニーズが公開された!
ところで最近は、実際の中小企業診断士へのニーズが公的な公開データとして存在するのをご存じでしょうか。それは事業再構築補助金の申請数です。事業再構築補助金の申請数は各回ごと、都道府県ごとに公開されています。中小企業診断士への市場ニーズそのものではないにせよ、事業再構築補助金の申請支援を担っているのは中小企業診断士が中心ですので、これはかなり実際の市場ニーズに近いものであると考えられます。
今回の調査で残念なのは、本当は第1回から申請件数と申請率が掲載されていたのですが、私の方で申請率だけ集計していたところ、第1回~第4回の申請件数が掲載終了になってしまい、本当の申請件数で比較できないところです。
ですが、先ほど調べた中小企業数に第1回~第10回の申請率の累計をかけることで、申請件数の近似値が取れますので、そうして出た数字を中小企業診断士数で割ることで、中小企業診断士市場魅力度指数というものを開発しました。この指数を地図上に表示したものがこちらです。
これだと東京よりも千葉・埼玉・神奈川の3県が診断士過剰、福岡よりも長崎の方が診断士が過剰のように見えますね。せっかくですのでTier表も作ってみました。中小企業診断士市場魅力度指数が高い地域ほど上、そして左に記載されています。
主要な地域の解説
まず、全国23位、ちょうど真ん中に入った茨城県について。個々の市場魅力度指数は79.9でした。推定される市場規模は大きめですが、診断士の数もそれなりに多く、指数を取ってみると全国でちゅど真ん中でした。
次に最も魅力的な市場となった島根県です。島根県は市場規模が最も小さいグループに入りますが、認定支援機関登録をしている中小企業診断士が3名しかおらず、競合不在という要因が大きいです。
市場規模がそれなりに大きい地域で指数が高いのは、岡山、広島などの山陽地方、岐阜、長野といった中部地方です。これらの地域では新規開業の余地が大きく、多少人数が増えてもそれを受け入れるだけの余力があります。
東京都は市場規模は全国トップですが、診断士の数も多く競争は厳しい地域です。しかし、埼玉・神奈川・千葉といった周辺3県はさらに厳しい競争に晒されています。この地域の中小企業診断士は東京に出て仕事を得ているものと考えられます。
長崎や山口は意外なことに中小企業診断士市場としての魅力が薄いことが分かりました。激戦区の東京よりもレッド・オーシャンです。地域の実情というのが分かりませんが、補助金ではない認定支援機関の需要があるのでしょうか?
おわりに
今回は中小企業診断士市場魅力度指数というものを開発し、中小企業診断士市場の分析を行ってみました。いかがでしたでしょうか?実は一部の地域はさらに細かく分析しており、同一都道府県内であっても地域によって中小企業診断士の密度は大きく違うことが分かっています。人のゆく裏に道あり花の山。競争の激しい都道府県であっても人が行かない地域で独立することで、大きな売上を掴めるかもしれません。