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人手不足は永遠に解消しない。対策を

深刻化する人手不足

人手不足が深刻化しています。アベノミクスとともに始まった中小企業の人手不足は、コロナで一時的に緩和したものの再び悪化を続けています。

下表は中小企業白書からの引用で、業種別の従業員数過不足DIを示しています。マイナスにいけばいくほど人手不足を感じていることを示しています。

さらに、2021年ごろからこれ以上雇用が増えない「完全雇用」に達したものと私は見ています。

完全雇用になるとどうなるのか

これまでは

・平成不況で失業していたニートやホームレス

・本当は働きたいけれども条件が悪いので家庭に入っていた主婦

・定年退職した後再雇用されて条件が下がってまで働くのは嫌だということで老後を楽しんでいた高齢者

といった人々が労働需要の高まりと合わせて就職活動を始めていたため、人手不足を感じていても募集をかければ人は来ますし、別に給料を上げなくても問題はありませんでした。しかし、完全雇用に達するとこういう人たちはもうどこかの企業に就職してしまうため、ハローワークや転職サイトからはいなくなります。採用難を感じる企業が増えています。

どうしてこうなった

こうなった原因はアベノミクスにあります。アベノミクスの実施で日本社会のマインドが転換し、経済活動が活性化したため雇用が増えたのです。

アベノミクスは3本の矢と言われますが、どれが効いたのかはいまだによく分かっていません。しかし、当時主流だった「財政政策派」「金融政策派」「構造改革派」という3つの勢力を「国土強靭化」「異次元緩和」「構造改革」と言ってなんとなく納得させ、多分景気は良くなるだろうという気分にさせたのは偉大な功績です。

そこにオリンピックを引っ張ってきて無関心層もワッと盛り上がった。景気は気からと言いますが、マインドが大きく転換したことで景気が拡大したんですね。

人手不足を解消する4つの対策

完全雇用に達したら、基本的にはこれ以上全体としての雇用は増えません。摩擦的失業といって自分の意思で仕事を辞めて就活している人以外、失業中の人は無視できるほどしかいません。こうなるとやれることは4つに絞られてきます。

1つ目は賃上げをすること
2つ目は外国人労働者を入れること
3つ目は軽作業化でこれまで働いていなかった人を呼び込むこと
4つ目は省人化投資でそもそも人を要らなくすること

賃上げする

賃上げは分かりやすい方策です。札束でシバけば他社の人材を奪うことが出来ますし、これまで働きたくないと思っていた人もお金に釣られて働きだします。会社にとってはコストがかかりますが、人を雇えば雇うほど儲かるような仕事であれば賃上げは正解です。

賃上げで成功した企業の代表例がアメリカのフォード社です。フォードはかつて労働者を確保するため「日給5ドル」と宣言して募集を殺到させ、一気に成長したという歴史があります。当時の日給5ドルは今で言うと年収1,000万ぐらいで、フォードで働くとT型フォードが買えるという評判も得ることが出来ました。

外国人労働者を呼ぶ

外国人労働者は今でこそ安いのですが、今後は斜陽になっていきます。

理由としては円安で日本円の力が下がっており、他のアジア諸国の方が高給というケースも増えてきていることが挙げられます。それともう1点。多くの企業が外国人労働者を入れると労働需給が緩んでしまい、日本人の給料が抑制される結果、景気が悪くなり売上が減ってしまう可能性があります。

自社にとってはよいことでも、みんながそれをすることで社会全体として悪い結果が生まれることを「合成の誤謬」と言いますが、外国人労働者を入れることは合成の誤謬のリスクがあるということですね。

軽作業化する

軽作業化というのは聞きなれない言葉かと思います。例えば重い荷物を運ばなければならなかったものを改善し荷物運びの業務はなくす、人が目視で確認していたのをセンサーと監視カメラで確認する手間をなくすなどの業務改善を行い。重労働とされていた仕事を軽作業に変換することでコストを下げ、人材を呼び込むというものです。

実は日本の人手不足はまだら模様となっており、建設作業員など重労働ほど人手不足が深刻で、デザイナーなどエアコンの利いた部屋でクリエイティブな作業をする仕事や一般事務は、実はかなりの人余りです。ここは市場の歪みで、遠隔操作やリモートを使って重労働を事務作業に転換できれば、人件費は劇的に下げられます。

特にこれまで「男の仕事」と呼ばれていた分野は今後、人手不足が一層進行し労務単価は上がっていきます。経営側としてはここをどうにか改善し、女性や高齢者や障害者が働きやすい職場を作ることが求められます。

省人化投資をする

省人化投資というのは、軽作業化をさらに押し進め、ロボットや生産機械を導入してそもそも人を要らなくする投資のことです。雇用自体を減らすという劇的な対策ですが、基本的には軽作業化の延長線上にあるものです。

省人化がなぜ注目されるかというと、2024年から省人化・省力化に資する設備投資に対しては補助金が出るようになったからです。これまで国は雇用を守る中小企業に対し補助金を出す傾向にありましたが、最近は設備投資で労働生産性を高め、賃上げをする中小企業を露骨に応援するようになっています。政策目標が雇用確保から賃上げに変わったということです。

人手不足は永遠に続く

アベノミクスによる好景気で人手不足は始まりましたが、それと合わせて少子高齢化が止まらないことも考える必要があります。定年退職などで仕事をやめる人よりも新卒として新たに就職する人が少ない状態が今後数十年に渡って続くことは既に確定しています。

今後、よほどの大不況が来ない限り人手不足は永遠に続きます。人手不足の解消策は遅かれ早かれ全ての会社が取り組む課題になっていくでしょう。

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